月別アーカイブ: 2014年4月

結婚ていつしてたっけ

もう分からないのだ。
新婚旅行のビデオがある。

これがまた一部始終だが、一部始終過ぎる。

誰も、もはや見ない。
長すぎるから。

進化@仙台

北海道へ行ったのは確かだ。
女満別空港でおり、網走へ行ってから、知床を回って道東をおりてくる。旭川から新千歳へ向かった。

懐かしい。
しかしいつだったのか。

● ふと

お嫁が買ってくれてた、冷しゃぶを煮る。
冷蔵庫に入っていたものだ。

しゃぶしゃぶを煮るには、昆布を浸す。
こぶを煮てから鍋をするとは

● お嫁に教わった

結婚して、それから知ることも沢山あるものだ。
こぶを探しながらふと、海老名に引っ越して、これまた何年か分からなくなってる。

いつ海老名に来たんだっけか。

たしかそれは

● このブログに記録させてある

はずだ。
これだ。

もう(2009年9月8日, 02時08分)

いや、これじゃない。
もっと前だ、

NO2連休(2008年11月15日, 02時35分)

なるほど、海老名にこしてきたのは2008年11月のこと。

●じゃあ

結婚したのはいつなのか。
これはミステリーだ。

● そんな

ことを思いながらなんとなく生きてる。
死に向かって薄ら笑いで動く歩道に乗って、歩いたり走ったり。

しゃぶしゃぶを

● 食べたいのだ

そしてこぶを煮る。

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場所は分かってるのだ。
台所の引き出しの上から3段目だ。

そういえばこのこぶ、ずっと使ってんなーと思い。
ふと

● 賞味期限を

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見る訳だ。

● けしからんことに

2011年が賞味期限だ。

そういえば結婚してからずっとこの昆布を使ってた気がする。
いつどこで買ったのかと思い。

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● 見ると

知床第1ホテル。
あの日、新婚当初の僕らは北海道を新婚旅行で巡ってた。

そう言えばホテルで昆布を買った気がする。
大事に大事に使ってきたんだ。

もとより貧乏性の夫婦だったのかもしれない。
結婚して、不妊治療をして、引っ越しをして、転職して、けんかして、仲直りして、猫を飼ったり、
そして子が生まれ、僕が教室長になって、現在に至るまで、

● 家の

ほとんどは買い直したり、買い足したり。
分子生物学的には、僕ら二人を構成する分子は新婚当時から今までで、全て入れ替わってしまっているにも関わらず、

● だし昆布だけが

実は僕らの生涯の中で、まだ、
新婚当初のまま、袋に入り。

天下り的に勝手に定められた賞味期限はとうの昔に切れていながら

● こんやの

疲れた僕へお嫁が買ってくれた豚しゃぶに
鍋へ入れられて鎮としている。

● あれから

引っ越しまでしてるのに。
まわりのルーやシチューの素は目紛しく入れ替わってる中、
なんか、心強くもあり。

はさみを入れられて徐々に小さく短くなっていく姿に何かを重ね合わせたりもし、
その対象が、お湯に煮られて味を出す昆布であるのに皮肉を感じながら
豚肉を食べてほどよく酔いるのだ。

西行のうた

門配に行く。
桜の花舞い落ちる中、保護者や新入生に、ペン入りのパンフの袋を手渡す。
私塾の営業活動である。

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しかしこの花はきれいだ。

願わくば 花のもとにて春しなむ その如月の 望月のころ

というのは西行というお坊さんの辞世の句、かと思いきや
生前の句だそう。

実際に旧暦の2月、釈迦入滅と同じ日に入寂したとWikipediaにある。

この歌を僕は間違えて覚えていて

願わくば 桜舞い散る春死なん ーー

だと思ってた。

この花は一体なんだろう。
昔からこの国にあり、しかもソメイヨシノは全て同じ遺伝子である。

去年の春、同じように同じ陽気の日に
門配に行った覚えがある。

あれからもう1年経った。

そう、この花を見ると
もう1年たったのだなという思いと、もう散ってしまうんだなという思いが交錯する。
だからこの国の人々は、この花を愛で育んできた。

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今より平均寿命がずっと短かった頃、
この国の人々、特に成人とされていた者たちは
いつしかこの花を見ながら、酒をくべるようになる。

そこには、この花に向けた視線とともに
1年生きた自分というものへの感慨があっただろうか。
そこには、もう1年先に自分が在るか否かという
怖れ、戦き、生命への畏敬の念というものがあったのだろうか。

そうして花の下、時には夜桜の下、青い月を見上げると、自然
杯は口へと傾く。

ーーー
この日の文は2014.4.7に近隣の中学校の入学式に合わせ、
塾のチラシを配りに行った帰りに、教室で、窓の向こうの青空に映える
小田急線沿いの桜の白く枝の揺れる様を遠く見ながら書いたものを転載した。